2007年09月20日

Audacityを使ってみた - 気分はすっかりレコーディングエンジニア

私の本業は翻訳の請け負いなのだが、たまたま「翻訳して、ついでに音声ファイルも付けてほしい」という依頼があった。プレゼンテーション用の原稿の翻訳をするわけだが、日本人である発表者が英語でプレゼンテーションをするのだからまず英語の練習もしなければならない。練習用に音声ファイルが欲しいというわけだ。

本来、翻訳と原稿の朗読はまったく別の仕事である。きちんとした仕事なら、きちんと朗読のプロに依頼してスタジオで録音するのが本来だ。けれど、練習用のお手本にそんなに手間と時間(つまりはお金)をかけているわけにもいかない。 翻訳者に頼み込んで、翻訳のついでに朗読してもらう話をつけた。パソコンに安物のマイクを突っ込んで、mp3に録音してもらう。そのファイルをメールに添付で送ってもらった。スタジオ録音ではないからいい加減なものだが、クライアントのニーズを満たすにはこれで十分。クライアントのニーズはコストでもあるわけだから、何も品質が高ければ高いほどいいというわけでもない。
けれど、受け取ったファイルをチェックしてみて、ちょっと困ったことがあるのに気がついた。音声ファイルはシーンごとに別々になっていて、全部で 12枚ある。この12個のmp3の録音レベルがそれぞれ異なっている。聴く方は当然これを通して聞くから、シーンごとに突然音声が大きくなったり小さくなったりするわけだ。これではいくら「品質はかまわないから」という条件でも不親切だ。とはいえ、翻訳者に差し戻して録音し直してもらうのも申し訳ない。もともとプロでもないところを無理に頼み込んでやってもらった仕事だから。
なに、録音レベルぐらいならパソコンでチャチャッと調整できるだろう。そう見当をつけて、synapticでmp3 editというような検索条件で探してみると、いちばん上に出てきたのがAudacityというプログラムだ。説明を読むと使えそうなので、インストール。
インストールするとアプリケーションメニューに早速入っているので、ここから立ち上げる。mp3ファイルを開くと、 波形がビジュアルに表示される。なあんだ、ずいぶんと録音レベルが低いのだ。そこで、「効果」の「増幅」で波形の振幅を大きくしてやる。このときに増幅率を調整して、ほぼ全てのファイルで同じような大きさになるように調整。さらに、「ノイズの除去」というフィルターがあったので、これでノイズの除去作業。なにしろ自宅録音だから、ノイズがけっこう入っている。パソコンのファンの音かもしれない。これはコンピュータ録音の落とし穴。
Audacityはリアルタイムで再生しながらこういった音の編集ができる。けれど、私の機械では再生はできなかった。どうやらサウンドデバイスが競合しているらしく、それを止める方法なんかもWeb上に発見できたのだが、いまひとつわからなかった。深入りして時間をつぶしたくなかったので、運用で乗り切ることにする。vlcで再生しながら作業すればいい。ところが、mp3の読み込みはすんなりできたのに、書き出しができない。これもWebで調べて、liblame0 というプログラムをsynapticで探してインストールすればいいことがわかった。編集した音は、mp3に書き出してvlcでチェックする。細かいことができないし手間もかかるから嫌な方法ではあるけれど、まあその場しのぎとしては上等。
録音レベルを一定に整え、ノイズを除去して全体を聞いてみた。だいぶと聞きやすくはなったが、ノイズの除去がなかなかうまくいかない。「多め」を指定すると肝心の音が変わってしまい、発音が不正確なところが出てくる。そこで、「少なめ」のいちばん低いところでノイズを除去したのだが、するとノイズの「ザーザー」いう部分は消えるのだが、そのザーザー音の強弱の変化が唸りのように残って「キュルキュル」というような奇妙な音になってしまう。どうやってこれを解決するのがいいかと少し試してみたら、単語と単語の間の息継ぎの部分を無音にしてやるとだいぶと聞きやすくなることがわかった。これは手作業になったが、まあたいしたことじゃない。ビットマップイメージのゴミとりみたいなもので、根気さえあればそれほど時間もかからずに終えることができる。
その上で、12枚のファイルを1つにまとめることにした。これはクライアントから特に注文もなかったので、かえってまとめた方が要望に沿うような気がしたからだ。コピー&ペーストで簡単にできる。その上で時間を見てみると、 ちょっとオーバーしている。そこで、「効果」の「スピードの変更」で1割ほどスピードアップ。
結果を聞いてみると、テープレコーダーを早回ししたときのように、声が高くなっている。これは「スピードの変更」ではなく「テンポの変更」を行うべきだったとあとでわかった。しかし、これは面白い。朗読者は女性だが、クライアントは男性だ。男の声にした方がクライアントにとっては練習しやすいだろう。そこで「ピッチの変更」に行ってやり、音階を4音ほど下げる。すると、見事に男性の声になった。このあたりから面白くなってきて、だったらイコライザーで声の質が変わるかとやってみたら、深みのあるいい声になった。オマケとして、高音域のノイズも減少してずっと聞きやすくなった。これで納品できると、一応の完成。
いや、いろいろと勉強になるものだ。特に、女性の声と男性の声は1オクターブ違うのだと思っていたが、それほどは違わないということを知ったのも面白かった。1オクターブの差は、歌をうたうときの便宜上のようだ。実際には半オクターブも違っていないらしい。
なんだかすっかり気分はレコーディングエンジニアだった。全ての作業に費した時間は4時間余り。わずか15分の朗読原稿に時間をかけすぎという気もするが、初回で手探りだったことを思えばまずはこんなものかもしれない。AudacityはWindows版やMac版もあるらしいが、synapticがなければこんな簡単にたどり着けなかっただろう。改めてUbuntuに感謝である。
posted by 松本 at 10:29| Comment(0) | Ubuntuのアプリケーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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