2011年05月10日

SheepShaverでMacを起動してみた

私はもともとMac使いで、5年前、時代遅れのiBookの遅さに耐えられずにUbuntuをインストールして以来のUbuntu使いだ。そのとき、一気にUbuntuに移行するのに確かにためらいはあった。いつでも逃げ出せるぐらいの腰の引けたUbuntuユーザーだった。
それがしばらく使って、もう後戻りするつもりがなくなった。その決断を後押ししてくれたのが、SheepShaverだ。
SheepShaverは、Macプラットフォームのエミュレーターだ。Mac、Windows、Linux上で動作し、MacOSの7〜9、つまりクラシック環境のMacOSをインストールできる。私がUbuntuに移行しようとしていた2006年は、Intel Macへの大規模な移行期だった。それまではMacOS 9がOSX上でクラシック環境として提供されていたが、Intel Macからはサポートされなくなる。それでもレガシーなアプリケーションを使いたい場面はある。そんなときに役立ってくれそうなのが、このSheepShaverだった。Mac上でSheepShaverをインストールすれば、その上にクラシック環境を実現できる。私は既に実験済みだった。そして同じSheepShaverがUbuntuでも使えるなら、MacからUbuntuへ移行してもそれほど困ることは起こらないだろうと思った。そういう保険のようなものがあったから、Ubuntuへの移行に踏み切れたわけだ。
ところが、現実はそういう安心感とは裏腹だった。まず、SheepShaverはUbuntuのリポジトリにはない。ビルドするかバイナリを探してこなければならないのだが、当時の私にはいずれもハードルが高すぎた。SheepShaverと同様のエミュレーターにBasilisk IIがあって、こちらは(hardyまでは)リポジトリにある。ところがこちらは68Kマシンのエミュレーターで、必要なROMファイルがちがう。幸い当時は6840搭載のLC475を使っていたのでROMを取り出すことはできたが、やはりまだUbuntu初心者の私としてはうまく動かすことまではできなかった。もうひとつPowerPCのエミュレーターにPearPCというのもあったが、これはMacOSのインストールがとてつもなく難しかった。ということで、「必要なときはいつでもエミュレーターでMacを動かせばいいや」と思っていたのに、実際には一度も実行したことがなかった。
それでも何不自由なく過ごしてこれたのだから、Ubuntuはたいしたものだと思う。実際のところ、レガシーのMacアプリを使いたいと思うことはほとんどなかった。いや、DTP用のレイアウトソフトには不自由したわけだけれど、だからといって時代遅れのMacOS 9で使うさらに時代遅れのQuark Xpressなんかでは既にどうしようもない時代にいるのは間違いない。過去を懐かしむことはあっても、実際に戻らねばならないことはなかった。一方、自分が作成したデータに関しては、あまりに古いものはもともと使いようがないわけだし、新しめのものはOSXで作成したものだった。OSXはもともとがUnix系だから、データそのものもLinuxと相性がいい。おまけに、既にWeb時代に入っていたから、コンテンツのほとんどはWeb上に存在していたり、テキストファイルだったりした。データの移行に旧環境は必要なかったわけだ。だから、SheepShaverのこともほとんど忘れていた。
さて、少し前、古いデータの見直しをした。これは、ちょっと事情があってコンテンツの量を確保しなければならなくなり、とにかく自分が著作権をもっていると主張できそうなものを洗いざらい並べてみる必要が生じたからだ。すると、MacOS 7〜8あたりをメインで使っていた時代にMacデフォルトのワープロソフトだったクラリスワークスで書いた文書がいくつか出てきた。けれど、これをUbuntu上で開くことができない。引越しの際にテキストデータに落としておけばよかったのだけれど、あまりに古い文書なのでその必要を感じなかったわけだ。いまさらMacで処理しようにも、最後のMacを先日手放したばかりだ。

そこで、久々にSheepShaverを思い出した。かつてできなかったことも、5年もUbuntuを使っていればどうにかなりそうな気がする。幸い、Mac上でSheepShaverを実験したときに確保しておいたMacOSのROMファイルもある。これがなければSheepShaverでMacOSを使うことができないようになっているから、必須のファイルである。もっとも、これは実はAppleのサイトからアップデータをダウンロードして抜き出すことができるのだそうだけれど。
まず、.debファイルを探すことにした。自分でビルドするのが本当なのだろうけれど、.debファイルが見つかればそのほうが簡単だ。PPAを検索すると割と新しいのが出てきた。これをインストールすると、あっさりと起動。なんのことはない。これなら5年前にMacで実験したそのままの延長でクラシック環境が再現できる。
ところが、Macを起動しようとするとアプリがクラッシュする。何度やっても同じ。さらに、CDからの起動の方法がわからない。CDドライブがMac形式のCDを読み込んでくれないわけだ。
読み込まない問題は、hfsutilsというパッケージを導入することである程度解決しそうだったが、hfsutilsでCDの内容を見たところでそこから起動できるわけではない。実はここで既に迷い道に踏み込んでいたのだけれど、それには気づかず、いろいろあてのない試行錯誤をしていた。そして、「やっぱりSheepShaverはうまくいかないんだ」と、ほぼあきらめていた。
けれど、ふと思った。横着をして他人の.debファイルを使ったのがいけなかったのではないかと。そこで自分でMakeすれば私も一人前のGeekなのだろうけれど、どこまでも横着な私は別のバイナリを探し始めた。新しめのものは3つほど見つかったが、そのうちの1つがうまく稼動した。そして、なんのことはない、きちんと起動したSheepShaverは、Ubuntu越しにちゃんとCDを認識する。苦労する必要は何もなかったわけだ。古いOS 8.5が、あっさりとインストール完了。
ということで、ここにクラリスワークスをインストールして、古いクラリスワークスのファイルを無事ひらくことができた。長らくUbuntu上で保存していたおかげで最初はクラリスワークスが認識しなかった。これは、Mac特有のリソースフォークが既に失われていて、データフォークだけになっていたからなのだろう。クラリスワークスの拡張子である.cwkを付けてやると、クラリスワークスファイルとして認識してくれた。これをテキスト形式で保存してやると、UbuntuでもOK。
最後のトラップは、このテキストファイルの中にgeditで読めないものが出てきたことだった。理由はまったくわからないが、全く問題なく読めるものと、エンコーディング不明で読めなくなるファイルとがある。エンコーディングはどれも同じはずなのに、何かがおかしいようだ。
ここはかなり苦労したが、最終的には、むかし愛用したiTextを使うことでどうにかごまかせた。まず、Mac版のiTextをMac側にインストール。これでトラブルの起こったテキストファイルを開いて、rtf形式で保存。これをUbuntu側に持ってきて、Windows用のiText(Wineで起動する)を使って開く。すると文字化けせずに開けるから、これをコピーしてgeditに貼りつけてテキスト形式で保存。かなりまわりくどい方法だけれど、数個のファイルからテキストを救出するという最低限の作業はどうにかこれで済ませることができた。
さて、こうやって確保したクラシック環境、ここに懐かしいソフトをインストールして使っていくかというと、そういうことはしない。というのも、よく考えてみたら、ROMファイルを確保しているとはいえ、そのROMを取り出した実機は既に処分している。SheepShaverのライセンスの解釈によれば(Appleのオフィシャルの解釈ではないが)、SheepShaver上でMacOSを起動するのは、実機を持っていてその実機を使っていないときにその実機から取り出したROMを使用する限りOKだ。ということは、私は不当にROMを持っていることになって、ライセンス解釈上、アウトになる。もちろん、実機がなくてもAppleのサイトからアップデータをダウンロードしてROMを抜き出すことができるわけだけれど、たぶんそれも本来のライセンスではアウトなんだろう。
ということで、ライセンスのないソフトを使うのはやっぱりフェアではないから、いくら手元にMacのソフトを収録したCDが残っていても、これを使うべきではないだろうと思う。それによく考えたら、ハードウェアに付属してきたMacOSは、何となくそれ自体がライセンス的に怪しいような気もするし。まあ、ここはAppleのサイトからMacOS 7.5.3をダウンロードできるので、それを使えば問題ないという説もあるにせよ、だ。
だから今回のデータ救出のためのインストールにしても、Appleから公式に文句を言われたら謝るしかないだろうと思う。決してフェアな使い方ではなかったはず。ただ、三分の理を主張させてもらえば、Macで作成したデータが時代とともに利用できなくなったのを利用できるようにするのは、元のMacユーザーとしての最低限の権利だと思うし、そのためにわずかの時間、既に利用価値の失われたソフトを起動しても、それはそれで許容範囲ではないかと。ま、勝手な主張ではあるのだけれど。
いずれにせよ、昔のMacは、懐かしくはあっても、時代遅れで使えない。たとえば、Quark Xpressでレイアウトをしても、出力形式のPDFのバージョンが古すぎるし、フォントの形式もちがう。あの時代のIllustratorよりは、いまのInkscapeのほうがはるかに高機能だ。満足なWebブラウザもないし、Twitterクライアントなどもとより存在しないし、正直、何のメリットもない。そしてつくづく思うのは、高機能のソフトを常に最新に保ってくれるオープンソースの有り難さだ。これはほんと、凄いと思う。
今回SheepShaverには少し手こずったけれど、正しいバイナリさえ入手できれば、あとはこちらのサイトから必要なROMも、インストール済みのOSのイメージさえ、ごく簡単にダウンロードできるようだ。今回、たまたま私の環境でうまく動作したバイナリファイルはこちらのサイト、ROMはこちらからダウンロードしたアップデータをtomeviewerというアプリで開けば吸い出すことができるそうだ。ただし、このtomeviewerはクラシックなMacOS上でのみ動作するソフトなので、ROMを吸い出すためにはいずれにせよ古いMacを持っていなければならないということになる。そういう意味からも、SheepShaverそのものがだんだん旧時代のものになりつつあるのが現状なのかもしれない。
posted by 松本 at 08:56| Comment(0) | Ubuntuのアプリケーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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